杖の使い方と選び方
両手で使う杖もありますが、基本的に杖は片手で使うものが一般的です。実際に杖を使用する場合は、どちらの手に握ればよいのでしょうか?
リハビリの現場で、歩行を安定させる目的で使用される杖は、悪い足と反対の手で握るよう指導されています。これは、体のバランスがとりづらくなり、転倒の危険があるためだそうです。杖と悪い足を同時に前に出して、次に良いほうの足を出す。あるいは、杖を先に出して、次に悪い足を出し、最後に良い足を出す。これが安全な歩き方だとされています。また、痛む足にかかる負荷を軽減したいという目的が大きい場合は、悪い方の手で持つと良いとされています。
グリップは、T字型とU字型がありますが、U字型はおしゃれステッキと考えられますので、歩行の安定性を考えるならT字型がおすすめです。T字型の持ち方は、グリップを手のひらで包むようにし、グリップの首にあたる部分を人差し指と中指のまたに挟むようにして握ります。あるいは、人差し指をシャフトに添えるように伸ばし、残りの指で握る方法もあります。
それでは、実際に杖を選んでみましょう。
チェック1 専門家と相談して体に合う杖を選びましょう。
ご利用者される方の症状に合う杖の種類を、リハビリスタッフなどの専門家と相談のうえで決定するとよいでしょう。次に、グリップが握りやすいか、フレームの長さが身長に合っているか、軽すぎたり重すぎたりしないかなど、ご利用者される方の体の状態に合うものを細かくチェックしましょう。
チェック2 杖の合わせ方に注意しましょう。
杖の合わせ方には、次のような原則があります。
その1 腕を垂直に下ろしたときの手首の高さにグリップがあること。
「手首の高さ」とは、とう骨茎状突起、もしくは、尺骨茎状突起の位置です。
その2 足の外側15cmおよび前方に15cmのところに杖をついたとき、ひじの角度が約30度になること。
その3 その1、その2の状態になるように、杖の長さをしっかり調節してもらいましょう。
杖の長さの一般的基準 身長÷2+2〜3cm 身長150cmの方で杖長さ目安77cm
<注意>腰が曲がっている方は身長であわせる方がよいとされています。下記の合わせ方も参考にお選びください。これを基準に使用される方が疲れず、使いやすいと感じる長さを選んであげましょう。
1・無理な伸ばせる範囲で軽く背を伸ばします。
2・腕を下げ、肘を曲げやすいところまで曲げます。
3・そのときの手から地面までの長さをはかりましょう。
チェック3 使う場所やシーンを考えて、ご自身にに合うものを選びましょう。
「どこでどんなふうに使うのか」も重要なポイントになります。多点杖は屋外や段差のある場所には向きません。長く持ち歩く場合は、軽い杖のほうがいいでしょう。ただし、あまり軽すぎると使いづらい方もいるようです。実際に使ってみて、最終的にいちばん合うものを選ぶのがベストです。
なぜ、杖が必要?杖を使うメリットとは。
メリット1 負担軽減
足腰にかかる荷重を減らして歩きやすくすることです。
歩行の補助として使用する杖の役割のひとつに「荷重を少なくする」ことが挙げられます。杖だけではありません。例えば、何かにもたれかかったとき、手をついたとき、足にかかる負担が軽くなる経験は、皆さんにもあるのではないでしょうか?
杖を使用することで、荷重を減らし、足腰の痛みをやわらげ、衰えた筋力をサポートします。私は、ぎっくり腰の経験があるんですが、片手を壁にあてながら歩くと楽だったことを記憶しています。
メリット2 支持面積拡大
体を支える面積を広げ、ふらつきにくくすることです。
高齢になるとバランス機能が低下し、歩くとふらついてしまう方が少なくないようです。歩行の補助として杖をつくことで、体を支える面積が広くなり、立っているときや歩いているときのバランスが保ちやすくなります。直線と三角形をイメージしていただくと分かりやすくなります。何でもそうですが、面積が広くなると安定しますよね。
メリット3 安定したリズム
歩行にリズムを生み出し、安定感を与えることができるようです。
人は無意識のうちに「イチ、ニ、イチ、ニ」という2動作歩行のリズムで歩いているといわれています。ところが、歩行が不安定になるとリズムが取りにくくなり、「イーチ、ニ、イチ、ニー」のような感じにもなるそうです。そんなとき、歩行の補助として杖を使って3動作歩行をすると、「イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン」とリズムよく安定した歩行へと近づくことができるそうです。
折りたたみ杖と伸縮杖と一本杖はどう選ぶ?
つえ・ステッキには用途に応じて、色んな形状がありますが、その長さは、ご利用になられる方に合わせなければ非常に使いづらいものとなってしまいます。棒状のつえは、シャフト(棒の部分)はアルミやカーボンで作られていることが多く、伸縮機構で長さを調節することができるものがほとんどです。木製の場合は、利用される方に合わせてセミオーダーで長さを調節していただくことになります。
木製杖 | 伸縮杖(アルミ) | 伸縮杖(カーボン) |
伸縮機構は、主にラチェット式とスクリュー式(回転固定式)が採用されています。ラチェット式はスライドさせてボタンを調節穴に引っかけることでロックします。スクリュー式は好きな位置でねじのように回して固定します。ラチェット式はしっかりロックでき、調節が楽な反面、2.5cmや3cmピッチで調節穴が開いているため、ご利用される方に合わせた微調整をすることができません。一方で、スクリュー式は、好きな位置で固定でき、利用される方に合わせた微調整が可能ですが、しっかり固定しないと使用中に縮んでしまうこともあります。思わぬ事故をまねかないよう、握力の弱い高齢者ではなく、周囲の健常者がチェックしてあげることが重要になります。とくにスクリュー式の場合は、ゆるんでいないかこまめにチェックてあげましょう。とはいっても介護用の杖は上記の理由により、握力の弱い高齢者が使用することが多く、ラチェット式の杖が主流になっています。
また、普段は利用せず、お出かけや疲れたとき、階段などでささえが欲しい時など、使用したいときにカバンからサッと取り出し、役立つのが「折りたたみ杖」。車での移動、宿泊などの際に便利も便利です。いくつかのパーツに分かれたシャフトを貫く形で強力なゴムロープが通してあり、ゴムロープの張力でサッと組み立てられます。組み立てと折りたたみの際に全体を引っ張る力が必要になりますので、握力の弱い人が使用する場合は、周りの方のサポートが必要になります。
杖を選ぶときに知っておきたい杖の種類(棒状の杖と多点杖)
杖を使用することで、つまづきやすくなった方は、歩行時の安定性が高まり、安心して歩くことができるようになります。
使用頻度や見た目など、ニーズに合わせた最適な一本を選ぶための杖の種類についてご紹介させていただきます。
大きく分けて次のとおり分類できます。
棒状の杖 | 地面と1点で接地 |
多点杖 | 地面と3点以上で接地 |
棒状の杖は、一般財団法人 製品安全協会がSGマーク認定基準を定めています。この基準には、次のような注意書が必要であるとされています。
「棒状の杖は、つえ無しで自立歩行できる人がより安定して歩行できるよう補助的に使用するもの。」
つまり、一点で接地する棒状の杖は、体重をあずけるような使い方は想定しておらず、歩行の安定をサポートする目的の福祉用具ということになります。
一方、多点杖は自立歩行がかなり不安定で、杖がなければ転倒するリスクが高い人、室内では手すりを使って歩いているような筋力低下やマヒのある方向けになります。SGマーク認定基準は設定されていませんが、3点以上で接地するので棒状の杖よりも安定性が高くなり、杖自体が自立するため、つえから手を離しやすく、椅子から立ち上がるときの支えにもなります。
多点杖には3点と4点で支持するもがあり、特徴は次のとおりです。
4点支持杖 | 平地ではしっかり安定する反面、不整地では安定しづらいので、屋内や施設内での使用がおすすめ。 | |
3点支持杖 | 不整地でも4点杖より安定感があるので、屋外での使用におすすめ。 |
その他杖の特徴は次のとおりまとめましたので参考にしてください。
松葉杖 | 歩き方・使い方はいろいろ。専門家とよく相談して使いましょう。 脇あてがあり、その下にグリップがある杖です。使用するときは脇の下ではなく、わきを締めてグリップで体重を支えます。片側だけ使う場合と両側とも使う場合があり、歩き方により体重の2/3から1/10まで荷重を調整することができます。 | |
ロフストランドクラッチ | 握力が弱い方、手首に力が入らないに。グリップとカフで支えます。体重を支えるグリップと、腕輪に腕を通して固定して支えるカフを備えた杖です。患側にかかる荷重が約2/3になります。 | |
プラットホームクラッチ | 肘で体重を支えるタイプ。著しく握力が弱かったり、手首に力が入らないなどで杖が握れない方向け。 | |
サイドウォーカー | 高い安定性。歩行バランスの不安定な方向け。立ち上がり時の手すりにも利用可能。 |
杖って作っている会社っていっぱい(-_-;)
前回のなぞなぞの答え 「人間」です!
「はじめ4本足、次に2本足、最後に3本足になるものなーに?」
そう!3本のうち、1本は杖・ステッキです。
さて、杖選びをどうしようか迷っている方も多いのではないでしょうか?
価格で選ぶ | デザインで選ぶ |
用途・使い勝手で選ぶ | メーカーで選ぶ |
そこで、私たちが使っている総合カタログに掲載しているメーカーをまとめてみました。
メーカー ア〜タ行 | メーカー ナ〜ヤ行 |
---|---|
アクションジャパン アロン化成 インターリンクス ウェルファン ケイ・ホスピア 幸和製作所 シーティーエス シナノ 島製作所 竹虎 田辺プレス テツコーポレーション | 中嶋次郎商店 日進医療器 パシフィックサプライ ひまわり フジホーム マキテック マックスファクトリー マルトク ミキ ユニトレンド |
ちなみに私たちのショップでは販売している人気の商品4点をピックアップしました。
ウェルファン | ケイ・ホスピア | テツコーポレーション | フジホーム |
杖って?日本で定着した歩行補助用具。実は・・・。
2025年に団塊世代が高期高齢者となるため、介護保険制度の変革時期を迎えようとしています。私たちは、介護ショップを運営しているせいか、どちらかというと杖は、歩行補助的な役割であると認識しています。ひょんなことから杖のことについて調べていると、歴史上、様々なことが分かってきました。その一部をご紹介します。
ステッキ(杖)は、古くは、王様や部族の首長や僧侶などの権威の象徴として、ヨーロッパの歴史においては、17世紀から20世紀頃にはモダンな装飾品として、どちらかといえばアクセサリー的なものでした。20世紀に入ると実用的なものが残ったステッキのようですが、イギリスでは紳士にとって、重要なアクセサリーであったとされています。
日本でも杖は古墳から出土することがあり、王の権威のシンボルであったようです。日本の文献で杖が初めて登場するのは『古事記』で“御杖”と記してあり、『日本書紀』でも“杖”と記しています。いずれも“みつえ”と読み、尊敬語になります。“み”とは神事に関わるものにつけられた神聖なものを示します。杖に関する伝承として、弘法大師など高僧の英雄が立てた杖が、成長して大樹になるという杖たて伝説は、杖銀杏、杖梅、杖竹、杖杉など全国いたるところにあるそうですね。
明治中年頃には、日本でも紳士のアクセサリーとして流行。大正末から昭和初期頃まで、若者も得意になってステッキを持ち歩くステッキ全盛期を迎えたとされています。ちなみに、江戸幕府がフランスに派遣した遣欧使節団のパリでの記念写真「文久3年(1863年)」で日本人の洋風ステッキの持っている様が確認されております。
一言に杖といっても、現在の日本ではいろいろな呼び方がされています。英語のstickの発音が訛った「ステッキ」、籐、竹などの意味から英語のcane(ケイン)もステッキとも訳され、登山杖はトレッキング「ポール」とも呼ばれています。
ちなみに、蛇杖が世界医師会や日本医師会のシンボルマークになっていることをご存じですか?これは、ギリシャ神話に登場するアスクレピオス「医学・治療の神」の持っていた杖に由来するそうです。(その杖には1匹の蛇が絡まっており、蛇が脱皮しヌケガラを残すことが若返り・蘇生・復活を示す。)また、杖にまつわる諺(ことわざ)で私がすぐに思いつくことわざは、「転ばぬ先の杖」。意味は「失敗しないように、前もって用意しておくこと。」だそうです。
長々と杖の歴史について触れましたが、介護シューズの選び方について勉強しているときに、杖っていつから必要なんだろう?という疑問から杖のことを調べるうちに歴史にたどりつきました(+_+)。健康年齢を維持・向上させるためには、歩くことが大事、靴が大事と思いつつ、お洒落に!もしもの時に!快適なウォーキングライフにお好みの杖・ステッキはいかがでしょうか?
最後に なぞなぞ 「はじめ4本足、次に2本足、最後に3本足になるものなーに?」
杖が倒れて困ってはいませんか?
コンビニでレジ打ちしていると杖をお持ちのお客様がいらっしゃいますが、お会計のときに杖がよく倒れて困っていたと記憶しています。市役所のカウンター、駅の券売機、飲食店のテーブルなどでも見かけたことがあります。
最近の病院内コンビニでは、レジカウンターに右の写真の赤丸で囲んだ部分のように凹みをいれいているところもあります。この部分に杖を立てかけると、杖が転ばないという心遣いのようですね。
また、杖の握る部分(グリップ)に加工を施し、壁やテーブルに立てかけても滑りにくい製品も販売されているようです。最近の杖は、デザインも豊富で、選ぶのも苦労しそうですね。デザインを重視される方もいらっしゃると思いますが、どうしても使い勝手が気になりますよね。
杖の転倒対策を整理すると次の4つが考えられました。
1.レジ台、カウンターに凹みを入れる
2.レジ台、カウンターに杖を立て掛けるアイテムを取り付ける
3.杖のグリップが転倒しにくい素材となっている製品を選ぶ
4.杖に転倒予防のアクセサリーをとりつける
ここでは、次の2つの製品をご紹介させていただきます。
一つ目は、『つえつえほー』といって、どちらかというと病院施設、コンビニなどカウンター型の接客店舗においてお客様をお迎えする側が、お客様の利便性を考えて設置するものですね。
二つ目は、『転ばぬ杖』です。こちらは、利用される方がお持ちの杖に取り付けるタイプです。各所にユニバーサルデザインが採用され、体の不自由な方の生活が便利になってきたとはいえ、ご自身である程度、対応を行わなければならない現状においては必須アイテムといえますね。
つえつえほー | 転ばぬ杖 |
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定価4,320円(税込) | 定価1,512円(税込) |
<特徴> T型タイプ、L型タイプ 粘着固定タイプ、貼るはがし可能タイプ | <特徴> 杖の柄にコーディネイトできるウィンドウシート 杖直径:Mサイズ1.5−2cm、Lサイズ2.1−2.5cm |
現在、様々な杖たて、杖置きがありますので、ご希望の方にはカタログを無料で送付させていただいております。
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